2020年9月1日
今回の試験の第一の感想は、出題サイドにこれまでの試験の単なる踏襲ではなく、新たな取組みの姿勢が見えることです。
即ち、直前に実施された昨年8月試験(昨年)の合格率は、旅客、貨物とも31%台でしたので、今回の試験には大きな変化はないと予想していただけに想定外でした。
また、道路運送法「問2」の設問中の、健康状態の把握に「努め」が「務め」と誤字となっていたことには驚きました。初歩的なミスであり、出題サイドに疑問を感じています。筆者も模擬試験を作成していますが、国家資格の試験では、このミスはあってはならない誤りであると思います。
なお、今回の試験の考察については、次のとおりです。
1.最も特徴的なのが、穴埋め問題です。出題された4分野のうち、労働基準法「問20」だけが過去出題されたことがある設問でしたが、残りの3分野はすべて初めての設問でした。このことは今までにはなかったはずです。
2.次に、感じたことは文字数がとても多いということです。おそらく初めて受験した方の多くは、最後の「問30」までたどり着かなかったのではないかと推測します。このため、実務上の知識及び能力は、「問28」の空走距離、停止距離及び車間距離を求める計算問題もあったので、足切りをクリアできない受験者がいるのではないか、と推測しています。
3.加えて、今回はこれまで出題されていなかった法改正事項(「問4」営業所の車庫間のIT点呼(旅客IT点呼)ができる要件(貨物H28.7、旅客H30.3)、「問3」安全管理規程の届出義務のある車両数(H30.4)、「問8」(貨物)荷主都合による30分以上の待機の場合の乗務等記録(H29.7)が出題されたほか、「問25」チュ―ハイのアルコール1単位や「問27」ABSなど、過去問にない設問により、受験者には戸惑いを与えたのではないか、と思います。
4.今後、出題サイドに検討してもらいたいことは、次のとおりです。
(1) 道路運送車両法の「問15」の穴埋め問題の「継続検査」を複数選択する設問については、複数選択できることの断りを設問中に入れる必要があったのではないかと、考えます。複数の字句を選択することは、今までにありませんでした。おそらく前回試験の道路交通法の「問14」の駐停車禁止の穴埋め問題で「10m」の複数解答を踏襲したものと思います。
(2)「問3」の安全管理規程の届出義務のある車両数の設問については、旅客の乗用は想定内ですが、貨物の200両はごく一部の事業者であるため、誤り問題しては「適切ではない」と考えます。
(3)同様に「問17」高齢者講習の設問は、旅客の乗用は該当者が一定程度いますので、よいとして、貨物の設問として適切か、と問われると別の設問の方がよいのではないかと考えます。
(4)労働基準法「問19」の深夜業の労働者が自ら受けた健康診断の結果に基づく医師の意見聴取の設問については、前回(H28年1回)出題を誤り問題としたものですが、深夜業の労働者ばかりではなく、通常業務の労働者が自ら受けた健康診断の結果に基づく医師の意見聴取についての設問を出題すべきではないか、と考えます。
(5)労働基準法「問18」休憩時間の「少くとも」は、条文をそのまま引用していますが、現代表記の「少なくても」に改めて出題すべきと考えます。国家資格とはいえ、どうしても違和感があります。
以上のことを踏まえると、今回の予想合格率は、旅客は30%を若干上下する程度なのに対し、貨物は第1問目から初めての誤り問題が出題されるなど、旅客の設問より難易度が上がるため、25%を若干程度下回る合格率を予想しています。
今回の試験を顧みて、次回の試験を受験される皆様方には、試験直前だけの学習ではなく、事前の準備をしっかりしたうえで、受験されることをお勧めいたします。
今回の試験は、出題サイドから、新たな切り口の試験問題を出題するとういう、明確なメッセージが送られてきた訳ですから、来春の受験予定者は本腰を入れた学習が必要になると考えます。
WINGジャパンでは、実戦力養成講座の「オリジナル教材」、模擬試験&直前対策講座の「重要ポイント教材」に加え、講義内容を、上述の分析の上に立ち、今以上に充実させて、2021年3月7日の試験対策に臨みます。
そして、今回、協会主催の講座を含めると延べ700名を超える受講者数のナンバー1ばかりではなく、旅客、貨物の双方を講義する強みを発揮し、名実ともに合格率のナンバー1を目指します!
なお、「オンライン講座」を世界最大級のオンライン学習プラットフォームである「Udemy」で開講しており、貨物に続き、旅客を本年中に開講いたしますので、ご活用いただければ幸甚に存じます。